モネが愛した風景に出会う──フランス・ジヴェルニーで過ごす芸術と自然のひととき

モネが愛した風景に出会う──フランス・ジヴェルニーで過ごす芸術と自然のひととき

パリから電車とバスを乗り継ぎわずか1時間半。ノルマンディー地方の小さな村ジヴェルニーには、印象派の巨匠クロード・モネが晩年を過ごした美しい風景が今も残されています。静かな田園に囲まれ、季節ごとに花が咲き誇るこの村は、まるで絵画の中に迷い込んだかのよう。芸術と自然が調和するジヴェルニーで、心癒されるひとときを体験してみませんか?

パリからの日帰り旅にもぴったりのロケーション

ジヴェルニーは、ノルマンディー地方のウール県に位置する小さな村で、パリから西へ約75kmの距離にあります。フランス国内に在住している方にとっては、パリからの日帰り観光はもちろん、週末旅行にもぴったりの場所です。

パリからの公共交通機関でのアクセス

最も一般的なのは、パリ・サンラザール駅(Gare Saint-Lazare)からTER(地方急行列車)でヴェルノン=ジヴェルニー駅(Vernon–Giverny)まで行くルートです。所要時間は約50分で、1時間に1~2本の列車が運行されています。

ヴェルノン駅に到着後は、シャトルバス(navette)で約15~20分。バスは列車の到着時刻に合わせて運行されており、ジヴェルニーの中心や「モネの家」前まで連れて行ってくれます。混雑するシーズン(春~秋)には、オンラインでのチケット予約や早めの移動が安心です。

車でのアクセス

車を利用する場合は、パリから約1時間15分。A13高速道路を利用し、ボニエール(Bonnières)出口もしくはヴェルノン出口で降りるルートが一般的です。美術館やモネの家周辺には有料・無料の駐車場がありますが、観光シーズンは混み合うため、午前中の早い時間の訪問が推奨されます。

地方都市からの訪問も可能

ルーアン(Rouen)やル・アーヴル(Le Havre)、カーン(Caen)などノルマンディー地方の都市からも車で2時間以内とアクセス良好です。フランス国内で在住していれば、短いバカンスや週末を使って気軽に訪れることができます。

モネの世界を体感できる「モネの家と庭園」

ジヴェルニーを訪れるなら、何よりも見逃せないのがクロード・モネの自宅と庭園です。モネは1883年から亡くなる1926年までの約43年間をこの地で過ごし、名作《睡蓮》や《日本の橋》といった作品の舞台となった庭を丹念に作り上げました。

現在、この邸宅と庭園は一般に公開されており、まるでモネの絵画の中に入り込んだかのような没入体験ができます。

四季折々の色彩が溢れる「花の庭(クロ・ノルマン)」

自宅の前に広がる「クロ・ノルマン(Clos Normand)」は、幾何学的な整形式の庭とは対照的な自由奔放さが特徴で、モネ自身が色の調和を重視して植栽を指示したと言われています。春にはチューリップやアイリス、初夏にはバラやデルフィニウム、秋にはダリアなど、季節ごとに違った表情を見せ、写真愛好家にも人気のスポットです。

中央には藤棚が設けられ、藤が咲く季節(5月頃)には幻想的な景観が広がります。

 

絵画のような静けさ「水の庭」と睡蓮の池

道を挟んで向かいにある「水の庭(Jardin d’Eau)」は、1893年以降にモネが新たに購入した土地に自ら設計したものです。最大の見どころは、アトリエの代表作《睡蓮》の舞台となった池。緑に囲まれた水面に白やピンクの睡蓮が浮かび、日本風のアーチ型の太鼓橋(橋は緑に塗装されています)が印象的な構図を形作ります。

この池は人工的に流れを制御しており、モネは水面の映り込みと光の変化を丹念に観察しながら、作品を描き続けました。

 

モネの暮らしが感じられる邸宅内部

モネの邸宅は、当時の家具や調度品を再現しながら保存されており、画家の生活を垣間見ることができます。特に注目すべきは、彼が情熱を注いで収集した日本の浮世絵コレクション。歌川広重や葛飾北斎などの作品が数多く飾られており、モネがいかに日本美術から影響を受けていたかが伝わってきます。

また、キッチンや食堂、黄色で統一されたダイニングルームも印象的で、19世紀末の暮らしを肌で感じることができます。

印象派の精神を受け継ぐ「ジヴェルニー印象派美術館」

パリから電車とバスで約1時間半、印象派の巨匠クロード・モネが晩年を過ごしたジヴェルニーの村に位置するのが、「ジヴェルニー印象派美術館(Musée des Impressionnismes Giverny)」です。モネの遺産を受け継ぎながら、印象派の多様な広がりやその後の芸術への影響を紹介する施設として、世界中の美術ファンに親しまれています。

もともと1992年に「アメリカン・アート美術館(Musée d'Art Américain)」として開館し、主に19世紀末から20世紀初頭のアメリカ人画家たちがジヴェルニーに滞在して生み出した作品を展示していましたが、2009年に現在の名称に改称。以降はフランス国内外の印象派とその周辺の芸術にフォーカスを当てた美術館として、特色ある展覧会を数多く開催しています。

展覧会とコレクション

ジヴェルニー印象派美術館では、クロード・モネをはじめ、カミーユ・ピサロやポール・シニャックなど、印象派やポスト印象派の画家たち、そして20世紀の抽象表現主義や現代美術に至るまで、印象派の影響を受けた幅広いアーティストの作品を紹介。
特に「光と色彩の探求」というテーマに沿った企画展が高く評価されており、2024年にはピエール・ボナールとナビ派を特集した展覧会も開催されました。

年間を通じて企画展は2~3回のペースで更新され、訪れるたびに新しい発見があります。展覧会によっては音声ガイドや子ども向けの解説も用意されており、ファミリー層や美術初心者にもおすすめです。

美術館の建築と庭園

建物は現代的でコンパクトながら、周囲の自然や光との調和が意識されて設計されています。展示空間は自然光を活かした設計で、印象派作品の魅力である“光の表現”をより深く味わえる構造です。

また、美術館に隣接する庭園も見逃せません。モネの睡蓮の池を彷彿とさせる水辺や、季節ごとに表情を変える草花が訪問者を出迎え、静かな散策が楽しめる空間として好評です。庭園は無料で入場可能なこともあり、地元の人々にも親しまれています。

四季折々に表情を変える村の風景

ジヴェルニーの魅力は、美術館や庭園にとどまりません。村そのものがまるで一枚の絵のように美しく、特に春から初夏にかけては、家々の壁に咲くバラや庭先の花が彩りを添えます。

車通りも少なく、のんびりと散歩を楽しめるのも嬉しいポイント。途中にはカフェやアートギャラリー、地元作家のショップも点在しており、ふらりと立ち寄るだけで豊かな時間が流れていきます。

まとめ:モネのまなざしを追体験する旅へ

ジヴェルニーは、芸術に興味がある人だけでなく、自然が好きな人にもおすすめできるスポットです。視覚だけでなく、空気や光、季節の移ろいまでもが印象的なこの村で、モネが見ていた風景を自分の目で確かめてみてはいかがでしょうか。